源氏物語第10帖「賢木」。
夕方になり藤壺の容体が落ち着き、
休んでいると塗籠の中から、
こっそりと出てきた源氏が、
藤壺の背後にまわりました。
藤壺はまだ胸が苦しく、
「このまま死んでしまうのかしら」
とため息をついています。
その横顔がなまめかしく、
弱弱しく沈んでいる様子が、
いたわしくてならず、
源氏はたまらなくなり、
藤壺の裾をそっと引っ張りました。
その拍子に源氏の匂いがさっとたちこめ、
藤壺は思いがけないことに、
そのまま突っ伏しでしまったのです。
着物を脱ぎすててでも、
逃げようとしたのですが、
長い黒髪が着物と一緒に、
源氏の手に握られているのです。
源氏は興奮して気が狂ったようになり、
泣きながら自分の恋を訴えるのですが、
藤壺は、
「本当に具合が悪いので今夜は帰ってほしい。
もう何も言わないで」
と相手にしません。
また夜が明け切ってしまい、
「このままでは大変なことになります。
どうか早く引き取ってください」
と王命婦と弁がお願いしました。
源氏はこんな恥ずかしい目にあいながらも、
まだ生きているのかと藤壺に思われるのもつらいので、
「このまま死んじゃおうかなとも思うのですが、
死んでも死にきれないでしょう」
などと藤壺に言い、二条の邸に戻りました。
源氏は藤壺の冷たさを恨めしく思い、
今度は手紙もぷっつり出さなくなり、
宮中にも東宮御所にも参内しなくなったのです。
次回に続きます。
2017年12月05日
源氏物語について その二十八
posted by コポ at 21:13| Comment(0)
| 源氏物語
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