源氏物語第11帖「花散里」
源氏は麗景殿の女御を訪れた後、
花散里のいる西向きの部屋へ、
目立たないように顔を出しました。
花散里にとっては久しぶりの上、
あまりにも美しすぎる源氏に、
つい恨めしさも忘れてしまったようです。
源氏は花散里になにやかやと、
親しみ深く優しい言葉をかけます。
その様子には嘘はないようです。
仮にも源氏と逢瀬を遂げた女たちは、
皆並みの身分ではなく、
それぞれに話が通じないということがありません。
憎々しいいざこざもなく、
源氏も相手の女も互いに心を通わせて、
過ごすのがいつものことでした。
しかし、逢瀬が途絶え途絶えになるのを、
嫌がるような女は、
何かと心変わりをするのも、
源氏は仕方のないことだと思っているのでした。
さっきの中川あたりの女も、
そんな境遇の女だったのです。
この「花散里」の帖はここで終わります。
源氏物語54帖の中で、
とても短い帖ですが、
弘徽殿太后の勢力から、
政治的な圧力が強まる中、
麗景殿の女御、花散里と、
心穏やかな人たちの登場で、
とても安心しますね。
花散里という人物は目立つ存在ではありませんが、
源氏はとても信頼して大事にします。
たとえば亡き妻葵との息子である、
夕霧を預けて後見役にします。
ですが、夕霧は成長してから、
「どうして父源氏が、
こんな美しくもない女性を寵愛しているんだろう」、
と不思議に思うところがあるのですが、
これは寂聴さんのご本によると、
第2帖「帚木(ははきぎ)」の中の、
「雨夜の品定め」にヒントがあるそうです。
源氏たちの女性批評の中に、
「顔でも身分でもなく、
心根がよければいいのだ」、
という発言がありました。
「花散里はまさにこの心根の部分で、
源氏に愛された女性なのでしょう」と。
花散里はこの後紫の上とともに、
源氏を支えていくのです。
ここまでが第一部前半となります。
私のつたない文章で、
わかりづらいところが多々あったと思いますが、
後半もぜひお付き合いください。
2018年07月30日
源氏物語について その三十八
posted by コポ at 21:21| Comment(0)
| 源氏物語
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